2011/11/02

阿比留記者の杞憂



産経の阿比留記者は嫌いではないし、慰安婦問題について幾つか貴重な情報を与えてくれている。しかし、民主党や菅直人批判に見られたようにジャーナリストとしては感情的過ぎるような気がする。この論説もその為に空回り気味。

これも前から言っていることだが、韓国を初め各国に建てられつつある「慰安婦の碑」は反日運動の痕跡でもあるのだから、長い目で見れば韓国人にとってバツの悪い記念碑になるだろう。・・・我々日本人が諌めてやる必要はないのである。日本国民の対韓感情が悪化するという懸念も杞憂だろう。

また韓国の国民の強い訴えにも関わらず日韓首脳会談で慰安婦問題が取り上げられなかった事は、大きな成果である。この問題に関して日韓両政府とも両国関係にマイナスはあれど益なしと考えている事が確認できた。もちろん韓国の政権が変われば多少の変化もあろうが、韓国期待の民主党(日本)政権すらこの問題から手を引き、韓国も今後180度転回するのは難しいだろう。

ただ、この問題と韓国の憲法裁判所判断の余波で、再び慰安婦「騒動」が四大紙に取り上げられるようになったのは良かった。改めてこの騒動が終わっていないことが、多くの国民の知るところになったはずだ。「謝罪マニア」や「問題先送り主義者」が問題を複雑化させて来たという阿比留の指摘は正しい。慰安婦問題の真相解明の為に元慰安婦の聞き取り調査の結果を公開させようという主張にも賛成である。彼が言うように「日韓関係の正常化のためにもすべてを白日の下にさらすべき」である。


慰安婦記念碑建立を阻止せよ

一見小さな出来事のようでも、政府がただ腕をこまぬいて見ているだけだと、日韓関係に取り返しのつかない禍根を残す計画が韓国で進んでいる。

元慰安婦援団体の「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」がソウルの在韓日本大使館前の路上に「記念碑」建立を計画し、ソウル市が許可したため12月にも設置される問題だ。

碑は慰安婦を象徴する高さ約120センチの少女の像の隣に空席の椅子が並ぶデザインだ。挺対協は毎週水曜日に日本大使館前で集会を開き、民主党の岡崎トミ子元国家公安委員長もかつて参加した慰安婦問題糾弾集会が1000回を迎える12月14日、除幕式を実施する意向だという。

だが、日本の軍や官憲が強制的に女性を集めた証拠は、政府が国内外の公文書館や関係省庁に八方手をつくして調べても一切見つからなかった。

挺対協は勤労動員された女子挺身隊と慰安婦を意図的に混同し、悲劇を演出しようとしているが両者は全く別物だ。貧困のため親に売られたり、悪質な業者にだまされるなどして意に反して慰安婦となったりした女性はいただろうが、それを日本軍のせいにするのは筋違いだ。

こうした歴史的事実を踏まえ、記念碑建立をやめるよう訴える機会が19日の日韓首脳会談だった。ところが、野田佳彦首相は会談後の共同記者会見で「慰安婦問題は出なかった」と述べ、韓国側がテーマとして持ち出さなかったこと自体が成果であるかのように胸を張った。

「いっそ記念碑建立予定の大使館前の路上にドラえもんやガンダムの像を100体ぐらい建てようか。とにかく記念碑を建てさせなきゃいいんだから」

記念碑建立取りやめを韓国側に働きかけている外務省筋はこんなヤケクソ気味のアイデアを披露する。韓国における日本の象徴である大使館前に史実と反する少女の強制連行を表した記念碑が建てば、日本は「性奴隷(セックススレイブ)の国、日本」であることを受け入れさせられた形になる。当然、日本国民の対韓感情は「そこまでやるのか」と冷え込むことだろう。

●政府は情報公開を

歴史問題ではいつも、自分と同調者だけが良心的で立派だと信じ込む謝罪マニアや、その場しのぎの問題先送り主義者が問題を複雑化させてきた。

「野蛮な行いをしながら公式な謝罪をしていないのは日本の国会議員として恥ずかしい。帰国したら慰安婦問題を広める」

今月12日の挺対協の集会には社民党の服部良一衆院議員が参加し、こう発言している。こうしたタイプの人にとって、韓国側が主張する慰安婦の強制連行説は、いくら根拠が薄かろうと反証があろうと疑ってはいけないドグマなのだろう。

また、慰安婦募集時の日本軍・官憲の関与の「強制性」を政治判断で認め、国際社会にそれを広めてしまった1993(平成5)年の「河野洋平官房長官談話」の罪もとてつもなく重い。

「女性が強制的に連行されたものであるかは、文書、書類ではなかった。本人の意思のいかんにかかわらず連れて来い、という命令書は存在しなかった」

河野氏自身が後にこう認めているのである。韓国政府の要請に安易に応じ、姑息(こそく)に出されたこの政府談話によって、日本の国際イメージはどれほど損なわれ、問題を長引かせることになったことか計り知れない。

結局、河野談話の根拠は韓国での元慰安婦16人への聞き取り調査だけだった。これも談話作成にかかわった石原信雄氏(当時官房副長官)が「裏付け、本人の親に会うとか当時の関係者に会うとかそういう手段はない。もっぱら本人の話を聞くだけだ」と証言している。

私はかつて、この聞き取り調査について外務省と内閣府に情報公開請求を行ったが、ともに「元慰安婦たちのプライバシー」を理由に却下された。だが、プライバシーを保護しながら情報公開する手段もあるはずた。日韓関係の正常化のためにもすべてを白日の下にさらすべきだ。




産経  2011.10.31