2011/12/28

田原総一朗 「金大中時代に決着」



田原総一朗はかなり早くから慰安婦問題には関わっていたので、この騒動については十分に知識があるはずだ。よって彼は、冷静にも「大統領は、慰安婦問題の解決について日本に期待していない」と見ている。今回の騒ぎは韓国の国内事情によるものであると彼は言い切る(各紙もそう見ていたようだが)。

ただし彼は政治家や民間人を問わず昨今かまびしい「日韓基本条約で解決済み」論には与しない。朝日新聞が最後の拠り所に選んだように、交渉の場で持ち出されたわけではない慰安婦問題は日韓基本条約の対象外という主張にも一理ありそうだ。

自分も、もしも日本人慰安婦が補償の対象になるなら、韓国人を含む外国人の慰安婦に対しても何らかの対応をしてもいいのではないかと考えている。ただし、日本人慰安婦の存在を無視した、いい子ぶりたいだけのパフォーマンスには反対である。アジア女性基金もそうしたパフォーマンスであったと自分は考えている。

話を田原に戻すと、彼はしかし、この問題は1998年の金大中の「過去は問わない」発言で終わったのだと主張する。この考えが妥当かどうは自分には分からない。ちょっと心許ないような気もする。ただ、彼が言うように、日本政府がこの問題を曖昧にしたまま総括していないというのは事実だろう。

糾弾する側もそれを要求しているのだから、政府は徹底的な調査をすべきで、それを日本語・韓国語・英語で公表すればいいと思う。政府調査は一度は行われているが、韓国側への遠慮も見られるし、十分情報が開示されているとは言えない(慰安婦に対する聞き取り内容とその検証)。英国政府が「血の日曜日事件」について徹底した再調査を行ったように、いつかは、外交的配慮も排した徹底的にドライな調査が必要だろう。

(中略)
12月17日に、韓国の李明博大統領が来日した。
日韓の首脳同士が交互に訪問する「シャトル外交」の一環である。
そして翌日、野田佳彦首相と京都迎賓館で約1時間の会談をした。
その会談で野田さんは、経済分野で日韓がいかに協力し合うかを
テーマにしようとしていた。
ところが、李大統領は従軍慰安婦問題にばかり言及し、野田首相を
追いつめたのである。
マスコミ各紙は「会談は慰安婦問題で緊張」「賠償請求問題が再燃」
といったトーンで報道している。
しかし、僕は問題の捉え方が違っているのではないか、と思う。

そもそも李大統領は、慰安婦問題の解決について日本に期待していない。
韓国では、来年4月に総選挙がある。
12月には大統領選がある。
今年10月のソウル市長選で与党は敗北しているため、
李大統領は日本に強硬な姿勢を示さないとならない。
韓国は「反日」で連帯するからだ。
だから、ここで日本に対して強く出て国内での支持率を
上げておきたいのである。
慰安婦問題が持ち出されたのはそのような韓国の国内事情がある。

野田さんも少し誤解をしているようだ。
慰安婦問題を「法的に決着済み」と伝えているが、一般的に
「決着済み」というときは1965年の日韓国交回復での協定を指す。
もしそうであるならば、野田さんはやや認識不足だろう。
当時、まだ韓国は慰安婦問題を十分にわかっていなかった。
これをもって「決着済み」と言うのは無理がある。
それでも、1998年の小渕恵三内閣のときに金大中大統領が、
「過去を問わない。未来志向でお互いの関係を発展させよう」
と言っている。
これでこの問題は、僕は「決着済み」だと思う

ただ僕が問題だと思うのは、日本が慰安婦問題を総括していないことにある。
総括をせずに曖昧なままにしている
僕たちは太平洋戦争についても総括をしてこなかった。
戦争が終わったあと、極東軍事裁判でA級戦犯が処刑されるなどした。
ただそれは、あくまでも連合国側が総括したのであって、
日本が総括したわけではないのである。(後略)