2013/05/19

「性奴隷か慰安婦か」朝日大島記者とサキ報道官

米政府としては、性奴隷それとも慰安婦? (大島隆記者)
そんな事より沖縄の問題の方を・・・

朝日新聞の報道では、「『(橋下)発言は言語道断で侮辱的なものだ』などと厳しく非難するコメントを朝日新聞に寄せた」となっていたが、実際は記者会見でのやり取り(訂正:この会見とは別に朝日新聞は当局からコメントを取ることに成功したらしい。内容はほぼ同じ。コメント欄参照)。しかも、原稿を読み上げているだけで表情も全く険しくない。性奴隷か慰安婦かの言質を取ろうとした朝日新聞の大島隆記者が苦笑されているような場面も。

性奴隷か慰安婦かの答えは簡単ではないようだ (サキ報道官)

これには伏線があって、一時期韓国メディアがヒラリー国務長官(当時)が日本軍慰安婦に対し性奴隷(sex slave)との認識を示したなどと報じ、韓国政府も便乗して公式用語を性奴隷に変更する用意ありなどと言い出すなど、韓国で呼び変え運動が盛り上がったという経緯があったので、国務省の報道官もまたかと思ったのではないか。

(大島記者の質問 48:50~)

大島記者: こんにちは。日本の朝日新聞のタカシ(大島隆)と申します。橋下大阪市長が最近、いわゆる「慰安婦」問題についてコメントしまして、道徳的見地からは認められないが、戦時中慰安婦は必要だったと主張しました。彼は同時にアメリカや他の国々が日本だけを批判しているのはフェアではない、なぜなら売春婦によって性的サービスを提供された軍隊が他の国にもあったからだと主張してます。アメリカに対する彼のコメントと言いますか、批判に対してアメリカ政府から何かありますか?

サキ報道官: そのコメントについては承知しています。橋下市長のコメントは腹立たしく、失礼なものです。以前にアメリカ政府が、性目的の為に人身売買されたあの時代のあの女性たちに起こったことは、大いに気の毒で明白に重大な人権侵害だと表明しているのですから。もう一度、犠牲者たちに衷心より深い同情の意を表します。そして、日本が近隣諸国と共にこれやその他の過去の問題を処理し、関係を深め共に前進できるよう願っています。

大島記者: この問題をどう言いますか。性奴隷ですか?慰安婦ですか?

サキ報道官: 定義するという事になるのかどうか。あなたは何というか、特殊なディテールを一般化(?)してますね(You kind of laid out the specific details there)。過去に我々はこの問題を慰安婦(問題)と言って来ました。

 ※1 国務省記者会見 2013.5.16

アメリカ政府は、拉致されたようなケースは性奴隷だが、それ以外は当時の言葉を採用してcomfort womenと呼んでいるという事なのだろう。しかし、これだけでは説明不足と思ったのだろう。ホワイトハウスの公式資料には補足説明がついている。性奴隷か慰安婦かの議論にも関わらないというのがアメリカの方針と思われる。

これらの犠牲者の名称を気にするよりも、我々はこれが巨大な規模で起こった(?)とても深刻な人権侵害だという事実を表明することを選ぶ。合衆国は同志や世界中の同盟国と共に現代の奴隷制と人身売買を非難する活動にコミットしている。それがどこで起ころうと

Rather than focusing on the label placed on these victims, we prefer to address the fact that this was a grave human rights violation of enormous proportions. The United States is also committed to working with our partners and allies around the world to denounce modern-day slavery and trafficking in persons no matter where it occurs.

もっとも、大島記者の質問のメインは橋下市長のアメリカに対する批判にどう答えるかだったはずだが、他国の過去の「女性利用」についてはハッキリとしたコメントはなし。アメリカは軍隊と性の問題に厳しいと言われるが、過大評価は禁物である。日本を特殊なケースとすれば、国際的にも問題化されていない過去の軍隊の買春問題については、アメリカは敢えて藪をつついて蛇を出す気はないようだ(日本の場合、政府が公式に問題を認めているので、遠慮なく論評できるのだろう)。

追記:これとは別に、朝日新聞は単独でアメリカ政府当局者のコメントを取ることに成功したらしい。日本談児さんからの情報。前半は会見でサキ報道官が読み上げていた文章と同じ。

橋下市長の発言は、言語道断で侮辱的なものだ。米国が以前に述べている通り、戦時中、性的な目的で連れて行かれた女性たちに起きたことは、嘆かわしく、明らかに深刻な人権侵害で、重大な問題だ。橋下市長は米国訪問を計画しているそうだが、こうした発言を踏まえると、面会したいと思う人がいるかどうかはわからない。

朝日 2013.5.17

※1
QUESTION: Hi, my name is Takashi from Japanese newspaper Asahi. Osaka City Mayor Hashimoto recently made a comment on the so-called “comfort women” issue, arguing that even though it is unacceptable from the moral perspective value, but the comfort women were necessary during the war period. And he also argued that it is not fair that only Japan is criticized by the United States and other countries, because there are other country military that were provided sexual service by prostitute. And do U.S. has any position on his comment or criticism against the United States?

MS. PSAKI: We have seen, of course, those comments. Mayor Hashimoto’s comments were outrageous and offensive. As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions. We extend, again, our sincere and deep sympathy to the victims, and we hope that Japan will continue to work with its neighbors to address this and other issues arising from the past and cultivate relationships that allow them to move forward.

QUESTION: Do you describe this issue sex slave or comfort women?

MS. PSAKI: Again, I don’t know that I’m going to define it. You kind of laid out the specific details there, and we have described this issue in the past as comfort women[ii].