2017/10/21

在日の聖地の慰安婦碑に、在日からも批判

望郷の丘の慰安婦の碑

望郷の丘とは、在日韓国人の願いを受けて作られた墓地である。日本以外で亡くなった人々も埋葬されているらしいが、もともと日帝による「強制連行」被害者の為の墓地というニュアンスで始まった。そういう点で政治色はあったのだろうが、現在では、たぶん、少なくとも在日韓国人にとっては純粋に異郷で亡くなった同胞の墓所という位置づけなのではないか?

しかし、韓国の人々(と政府)にとっては事情が異なるのかもしれない。韓国政府が望郷の丘に慰安婦の碑を建てようとしている事に対し、在日の間からも不満が出ていると在日系の新聞、統一日報がわざわざ報じている。振り返ってみれば、民団がプサンの日本総領事館前の慰安婦像の撤去を求めたことからも分かるように、在日韓国人の多くも韓国の慰安婦狂騒を快く思っていないのだろう。

統一日報によれば、女性家族部(省)が新政府の意を忖度して碑の設置を急いだという指摘が出ているということである。女性部この春からデザインの公募を行っていた。韓国政府はこれに先立つ二年前、望郷の丘内に「日本軍慰安婦被害者」の為の特別墓地を造成すること決定していた。在日韓国人にとって父祖の眠る神聖な墓所が、慰安婦キャンペーンのテーマパークに変えられつつある。怒るのは当然だろう。

望郷の丘に少女像

女性家族部の決定に在日怒り

海外同胞らが眠る「国立望郷の丘」(忠清南道・天安)に、従軍慰安婦の追悼碑が設置される。日本当局は、外交ルートを通じて懸念を表明。また、当事者でもある在日同胞も怒りをあらわにしている

追悼碑の設置は、9月25日に決まった。日本当局は設置が決まった翌日、河野太郎外相が李俊揆駐日韓国大使に「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の精神に反する」と懸念を伝えた。「日韓関係に水を差しかねない」との言葉も、複数の日本メディアが伝えている。

菅義偉官房長官も同日の定例会見で「国際社会にも約束したことで、合意を着実に実行していくことが極めて大事だ」と強調した。

追悼碑の設置を決めた女性家族部は、傘下の韓国両性平等教育振興院を通じ、追悼碑のデザインを公募した。選ばれたのは、少女像を含む「安息の家」。3回目の公募でようやく当選作が決まり、年末までに完成させる方針だという。政権が替わったことで、女性家族部が政権の意向を忖度し、急いで碑の設置を決めたとの指摘を受けている

女性家族部の鄭鉉柏長官は、「望郷の丘が日本軍慰安婦被害者を追悼できる新しい空間になるように願っている」と述べた。

望郷の丘は、在日同胞をはじめとする海外同胞の安息のために建てられた。民団が提案し、当時の朴正熙大統領の後押しもあり、1976年10月に完成した。ホームページによると、国家別の埋葬および予約数は、昨年末時点で、計3888。そのうち日本出身者が3296、米国が242、台湾が128、ロシアが73と、日本が圧倒的に多いことがわかる。奉安堂(納骨堂)の利用者および予約数でも、全1349のうち、日本が653と、約半数を占める。在日韓国人にとっては、ゆかりの深い場所だ。

祖国を離れた在日から見て、本国で眠りたいときに眠れる場所であるのは確かだ。民団は毎年、現地で行われる合同慰霊祭に参加しており、「自分たちが建てたもの」との思いは強い。追悼碑の設置について民団中央の関係者は、「いまのところ公式見解はない」と答えた。

ただ、別の在日韓国人は、「国立」墓地に追悼碑が設置されることに懸念を示している。「国家間の合意であるため、気に入らなくても守らなければならないのに、よりによって政府が国立墓地に建てるのは、日本を完全にバカにする行為だ」と語気を強める。墓地の設置を要望し、また多くがそこに眠る在日韓国人は「自分たちの気持ちを無視するもの」と憤っている

統一日報 2017.10.18 [全文]

「望郷の丘」の現在の公式サイトには、
強制連行を仄めかす記述はない
(英語版にはある)

「望郷の丘」に建てる「慰安婦」追悼碑が確定
ジナトゥの「安息の家」…今年設置し、来年の顕忠日に除幕式

国立望郷の丘に設置される日本軍「慰安婦」被害者の追悼碑が確定した。
女性家族部と韓国両性平等教育振興院(両平院)は、当選作が出なかった4~7月の1、2次公募に続き、8月3日~9月8日に3次公募を行った結果、造形物の制作会社であるジナトゥの「安息の家」(写真)を選定したと25日明らかにした。

「安息の家」は4つの追悼碑が連なった形状で、被害を受けたハルモニ(おばあさん)の生涯を時期別に分けて恐怖と苦痛、挫折、つらい人生、勇気と活躍、蝶になって飛んで行く姿などを表現したと両平院は説明した。追悼碑の事業予算は1億8500万ウォン(約1830万円)だ。両平院は今年中に追悼碑の竣工を終えた後、追加の埋葬、周辺環境の整備などを経て、来年の顕忠日に除幕式を開く計画だと説明した。

1976年、忠清南道天安市(チョナンシ)に建てられた国立望郷の丘には、国外同胞や慰安婦被害者をはじめとする日帝の強制徴用者たちの遺骨が埋葬されている。ここに埋葬された慰安婦被害者は42人だ。女性部は他の地域に埋葬された被害者の遺族の考えを聞き、追悼碑周辺に改葬できるように支援する計画だ。

チョン・ヒョンベク女性部長官は「今後もさまざまな歴史記録を通じて女性の人権に対する正しい歴史認識を打ち立てていく」と話した。

ハンギョレ日本語版 2017.9.26[全文]