2014/01/02

超大国・米国におけるジャパン・ディスカウント (読売)


「日本政府は現在のところ、『ジャパン・ディスカウント』に表立った対抗策を打ち出していない。『韓国がやり過ぎれば世界の不信を買う』(在韓日本大使館筋)と見ているためだ」

その通りならいいいのだが、言い訳なのかもしれない。ただ、「外交を考えるうえで大切なのは、国際社会にどう映るかという視点だ」という指摘は正しいだろう。日本側もその点を頭に入れて反論しなければ、自分が墓穴を掘る。


冷え切る日韓(2)

米国での反日 力増す

韓国で盛りあがる「ジャパン・ディスカウント」 (日本引きずり下ろし)。これに呼応するかのように、米国でも韓国系米国人の反日活動が活発化している。       {

7月30日、米西海岸ロサンゼルス近郊のカリフォルニア州グレンデール市。緑豊かな公園の一角に、韓国系団体「カリフォルニア韓米フォーラム」の働き掛けで「従軍慰安婦」を象徴する少女像が設置された。2011年末からソウルの日本大使館前に置かれている少女像とほぼ同じものだ。

設置の許可に先立ち、グレンデール市議会は7月9日に公聴会を開いて住民らの意見を聞いた。

公聴会には、米国で日本の地位向上に取り組むNPO「日本再生研究会」の目良浩一理事長(ロサンゼルス在住)ら多数の日本人や日系住民が出席した。目良さんたちは、「慰安婦が日本政府によって強制的に駆り出されたというのは作り話だ」と主張し、少女像の設置に反対した。

対する韓国系住民らは、「韓国人女性が性奴隷にされた事実は隠せない」と主張。1993年の河野洋平官房長官(当時)による河野談話回を根拠に、「日本政府自身が性奴隷の管理・運用への関与を認めているじゃないか」と指摘する発言もあった。

採決の結果、少女像の設置は市議ら5人のうち4人の賛成で認められた。

米国のほかの街でも、慰安婦に関する記念碑建立や議会の決議が相次いでいる。ニュージャージー州バーゲン郡では3月、裁判所の前庭に「性奴隷になるよう強制された」と明記した記念碑が建立された。同じ場所にはナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺や米国の奴隷制に関する記念碑がある。慰安婦問題を「ユダヤ人虐殺にならぶ歴史的蛮行」と印象づけようというわけだ。

こうした反日活動を主導している韓国系のコミュニティーは、強い結束力を胯る。米国の世論に影響を及ぼすほどの政治力もつけ始めた。

その一例が、日系のヨーコ・カワシマ・ワトキンズさんが86年に出版した自伝的小説『竹林はるか遠く-日本人少女ヨーコの戦争体験記』の排斥運動だ。

ワトキンズさんは終戦直後に朝鮮半島から引き揚げ、米兵と結婚して米国に移住した。『竹林はるか遠く』は、自らの体験をもとに戦争の悲惨さを訴えた作品だ。98年には米国の教師用ガイドブックで推薦図書とされ、学校の読書教材にも使われた。

ところが、韓国で2005年に翻訳版が出版されると、朝鮮人が暴行や略奪を行ったとする描写が韓国内で問題になった。米国でも韓国系が「植民地支配の歴史を歪曲している」と主張して排斥運動を展開、一部地域で推薦図書リストから外されてしまった。

韓国は、超大国・米国における「ジャパン・ディスカウント」を重視している

先月訪米した韓国国会議員団は、米駐在の韓国外交官を集めた場で「慰安婦問題は国際社会で解決しなければならない」と述べ、米国で韓国の理解者を増やすようハッパをかけた。

もっとも、過激な反日活動は、韓国にとって逆効果となるかもしれない。移民国家である米国には、各民族が出身国をめぐる「歴史認識」で争うことに冷ややかな空気があるからだ。

カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員(元国防総省上級顧問)は、歴史問題について「米政府は一方の側の支援はしない。友人が2人いる場合、1人だけ選ぶことはできない)と語る。

日本政府は現在のところ、「ジャパン・ディスカウント」に表立った対抗策を打ち出していない。「韓国がやり過ぎれば世界の不信を買う」(在韓日本大使館筋)と見ているためだ。

外務省幹部はこう言う。

「外交を考えるうえで大切なのは、国際社会にどう映るかという視点だ。韓国の振る舞いは自滅の道を歩んでいるようなものだ」

読売 2013.11.15 (4面)